2009年11月アーカイブ

玄米

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初めて食べたのは8年前である。そのときはよくわからなかった。

 

この頃は白米を食べることを躊躇するくらいに、玄米を食べている。玄米は白米に比べて、腹に収まる。体にしっくりくる。

 

玄米菜食がちょっとしたブームなのは知っていた。実感としてはむしろ、少し下火になってきている、くらいに思う。バブルがはじけて少したった頃、本屋の料理本コーナーに玄米菜食の本が並ぶようになった。それらの本にはどれも、「マクロビオティック」という文字が印刷されていた。今はそれが、少しずつ、「野菜料理」に変わってきている。野菜料理の本に、玄米については書かれていない。

 

話は違うけれど、今年は、小説家太宰治の作品が次々に映画化されている年である。生誕100年なので、ということだろうが、大衆の共感を呼ばなければ経済活動には乗らないのだから、時代は太宰的なのかもしれない。パソコンでダザイと打つと、堕罪と変換される。ちょっと皮肉だ。

 

太宰治はどういう人なのかというと、自意識過剰な人である。自意識過剰な私が言うのだから当たっていると思うが、でも彼はそういう言われ方は嫌いだと思う。だいいち過剰な自意識なんてあるのか、と、そういう話でもある。

 

とにかくこんな風に、人気者の太宰治は色々な言われ方をされてしまうわけで、その言われ方は、およそ精神の観察に終始する。そしてそれはどうしても、精神の脆さ、という話になって、こうなると、デリケートは悪だ、という乱暴な方向にも行きかねない。

 

だから、精神の観察は肉体の点検と重なるように、でなければならないと思っている。こう言うと簡単に聞こえるかもしれないけれど、太宰治は体が弱っていたから自殺した、ということだって大いにある。

 

精神に、強い弱い、鈍い鋭いがあるのならば、肉体にも、生まれもってか育ちなのか、その両方だろうが、色々な体の傾向がある。だから一概には言いにくいのが通常で、でも一度体質の共感をしてしまいさえすれば、自分のことならよくわかるから、一概に、言えてしまえる。

 

まずは、酒について。

 

酒が人に及ぼす作用に、呼吸が上ずる、というのがある。肩で息をする、というのに近い。うわずった呼吸は、酒が抜けるまでうわずったままで、というよりむしろ、この、酒が抜けてゆくそのときこそが上ずっている。上ずって困るのは、ストレスに反応しやすくなること。それが精神のデリケートと重なれば、大きなダメージにもなる。

 

うわずった呼吸は、体の中心をずらしてしまう。中心はどこか。この中心とは、心が安定するときの体の中心、のことである。これつまり、腹だと思う。腹に中心がないと、人間はもろい。突発的なストレスが襲ってきたとき、腹に力を入れて一気に息を吐き出してみるとわかる。何もしないでいるよりストレスを感じずにいられるはずだ。呼吸は、腹にあると安定する。

 

これと同じようなことで、食べ物もまた、腹に収まると安定する。それがつまり、玄米は白米に比べて腹に収まる、という話になる。

 

食べ物は口から入れてまず、胃袋に収まる。いきなりそれを通り越して腹に収まることはない。でも玄米というのは胃に入ったときの重苦しさがないから、食べたときに、これは腹に収まっている、と思えてくる。白米はときに、それこそ肩で息をせざるをえないような息苦しさを伴うのに対して、玄米ではそれを感じない。白米と酒は、どうも似ているところがある。

 

玄米を食べていると、体がすっきりしてくる。子供のときに感じたような、わけもなく幸せな気分、も時々訪れたりする。そんな言い方はなんだかアホのようだが、アホになりきれているときというのはおおむね幸せなものだ。そしてこんなときは決まって、気づいてみれば体の中心が、腹のあたりにある。

 

私の体にとっての玄米はそういうもので、これを学術的にか、マクロビオティック的にか、とにかくそのよさを説明することは出来るのかもしれない。けれどもそれをしてしまうと、元も子もなくなる。

 

大事なことは体に訊いてみる、そういう話だからである。

堀澤宏之堀澤宏之
【ほりさわひろゆき】
料理家


おいしい食材とおいしいお酒をこよなく愛する若き料理人。

料理工房ほのじ Web:日々の仕事
群馬県伊勢崎市大手町6-21
TEL0270-75-1288

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