2010年1月アーカイブ

おせち

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  30代も後半になってくると、疲れに敏感になってくる。

 

疲れを、体を動かしたり気を回したりすることで生じるものだと思っているならば、あなたの体は若いです。私はこの頃、実は一番疲れることというのは「食べること」なんじゃないかと感じるようになってきた。

 

よく、年をとるとあっさりした料理が欲しくなる、と聞く。肉類が食べられなくなる、だったり、和食が好みになる、という風に。これは、あっさりした料理が内臓に負担の少ない料理だということで、裏を返せばそれが必要となるくらいに、内臓が弱ってきているということ。

 

和食というのはそうやって、基本的にあっさりした部類に入れられることの多い料理である。けれども和食の中には、あっさりしていない和食、というのも存在する。

 

おせち、です。

 

お正月の3が日、常日頃台所を預かっている者が少しでも休めるようにと、おせちには日持ちのする料理が盛られる。黒豆、田作り、昆布締めなど、水分の少ない干物や乾物を利用したり、締めたり漬け込んだりして水分を抜いて料理する。

 

そもそも、食べ物が傷んでくる要因の多くは水気にある。水分が多ければ多いほど、日持ちはしない。腐るのは水、なのである。そしてそれを防ぐために最も手っ取り早いのが「味を濃くする」ということで、なによりこれが、おせちの特徴でもある。

 

調味料というのは、食材の中に多く入れば入っただけそれと引き換えに水分が外に出てくる。だから腐りにくくするためには、味を濃くすればいい。味を濃くする、の中には、甘くする、もあるが、これは少し原理が違う。砂糖には他の調味料と違って保水力がある。だから砂糖を多くすると砂糖が水分を抱き込んで保存性が増す。多く、腐りにくい食べものというのは水分の少ないものが多いのだが、砂糖を使うとしっとりしたまま腐りにくい料理が出来るのも、こうした理由からである。

 

甘くて味の濃いのがそもそものおせち。そして食べ物の中でも体に負担の大きいのが、やはり甘くて濃い味の食べ物でしょう。仮にもし、そこにアルコールなぞという悪魔の流動食の追加があるならば、言わずもがな、これぞ最強の内臓衰弱2点セットと相成る。もーいーくつねーるーとー、と歌にまでして待ち遠しかった正月休みがどうしてこんなにも疲れるのかという原因は、こんなところにもあるのであった。

 

しかし疲れる。とくに料理人である私はこのおせちを仕込む際に味見をする。のべつ味見をしていればのべつそれを食べていることにもなる。これがさらに悪い。でもこういう私みたいなやつのためにちゃんと日本の食文化はフォローも用意してくれていて、それが正月三日に食べる「三日とろろ」だったり、七日に食べる「七草がゆ」だったりする。これらの一番の効用は、消化促進作用がある、ということ。とろろ(山芋)も、七草のすずな(蕪)やすずしろ(大根)も、消化を助けてくれる食べ物だ。だが、そうは言っても「食べる」ということに変わりはない。思うに疲れた内臓を回復させる一番の方法は、「食べない」、に限る。

 

以前、うちの隣の建築家先生と飲んでいて飲みすぎた翌日の対処法の話になった。彼曰く、「食べなきゃいいんですよ」である。これは名言だと思った。ナニが効くからといってヘタなものを口の中に入れるより、何も食べずにいることが内臓にとっては一番ありがたいんじゃないか。それ以来始めた私の健康法、「午前中断食」はなかなかいい。

 

食べ過ぎた、あるいは飲み過ぎた日の翌日は、正午を過ぎるまで水以外の食べ物を口にしない。今のところこれが、内臓疲労を回復させる最も効果的な方法だと思う。

 

もちろんそりゃあ、「過ぎない」、にこしたことはない。

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