2010年2月アーカイブ

雑炊

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 1月の料理教室には鍋をする。

 

 料理教室ができるくらいの厨房は最低限に近代的で、料理をする分には何の問題もない。でもその厨房のある家は120年を超える時代のついた代物。すきま風は一年中だから足元には冷気がたまる。冬場の料理教室はおよそ寒稽古に近い。

 

 少しでも厨房にいる時間を減らしてできるだけ温まって帰ってもらおうと考えた末、1月の料理教室は鍋のレシピが恒例となった。

 

 鍋のありがたいところは手間を減らせるところにある。仕上げの調理を食卓でするから、仕込みさえできれば準備は整う。調理道具が鍋一つで済むというのもわずらわしくなくていい。

 

 「今夜は鍋にしようね」

 

 こういう言葉が肌身に沁みるのは歳か。それとも現在状況か。人とのつながりを確認できるのも、鍋のいいところなのだと思う。

 

 商品としての鍋を扱ってきた私が考えてきたことは、鍋というのは「鍋あと」と言われる雑炊やうどんがメインだということ。

 

 鍋はまず、具材を食べる。具材は鍋の中の出汁で湯がいて食べるのだけど、料理人にしてみるとこれはただ火を通しているのではなくてその具材の持つ旨みを出汁の中に抽出している、ということになる。とかく家庭で鍋をするときに陥りやすいのは、やたらに具材を放り込んで食べごろもなにもなく無残な出汁にしてしまうことだ。これでは肝心の鍋あとが成り立たない。いつまでたっても鍋あとに付け足しの感を否めないのは鍋のあとの出汁が旨くないからであろう。あとのことまで考えずに具も出汁も腹いっぱいに平らげてしまうのもよくない。目先の食い気に堕するとはまさにこのことである。


 つまるところ最初に具材を食べるのは、前戯なのである。前戯で果ててしまうことほど恥ずかしいものはない。

 

 鍋+鍋あとでセットなのが鍋である。鍋あとまで終えてようやくその日の鍋は無事お開きとなる。しかしなぜ、鍋あとがメインなのか。

 

鍋はまず、具材を食べる。もちろん汁も味わいながら食べるのだが、あとのことまで考えるのが大人なんだからそこで飲みすぎたりしてはいけない。具材は固形物である。それに対して鍋あとは雑炊でもうどんでも出汁を主体とした流動食を味わうことになる。考えるべきは何なのか。食べごたえか、味のバリエーションか。私は、温かさの優位性、だと思う。その点で固形物と流動食どっちが沁みるかとなれば、後者である。

 

つまり鍋あとがメインのわけは、鍋あとが沁みるから、です。

 

出汁を口に入れている現在状況が寒ければ寒いほど、温かい汁というのは五臓六腑に沁みてくる。ここに、身も心も温まることを第一義とする鍋が極まる。鍋の面目躍如とはまさにこのことである。

 

「今夜は鍋にしようか」

 

暦はもう立春を迎える。いったいこの冬何度目の鍋だろうか。温かくなるためなら何度でもやる。正しい鍋への取り組み方とはそういうものだ。いくらでもやればいいんです。

 

せっかくなので雑炊作りのポイントをいくつか。どうぞお試しあれ。

 

      出汁に日本酒を加えて沸かし、アクをすくう。日本酒には味に厚みをもたせる能力がある。入れるのは出汁の2%程度。

      ご飯は少なめにする。膨らむことを考えて、出汁の半分程度に。

      ねぎは2種類用意。長ねぎのせん切りと万能ねぎの小口切り。長ねぎはご飯と同時に、万能ねぎは溶き卵を加えて火を止めてから入れる。

      溶き卵は煮立ったところに入れ、箸でそっと切って、すぐに火を止める。こうするとふんわり仕上がる。

堀澤宏之堀澤宏之
【ほりさわひろゆき】
料理家


おいしい食材とおいしいお酒をこよなく愛する若き料理人。

料理工房ほのじ Web:日々の仕事
群馬県伊勢崎市大手町6-21
TEL0270-75-1288

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