v

醤油

RIMG1436.JPGなんにつけ、比べてみないとわからない。

 

いま目の前に醤油が20本。この2週間くらいの間、暇さえあればなめている。なめてみて醤油のなんたるかがわかったかと言うと、そうでもない。でもそれなりに、面白いなと思うことはある。

 

たとえば、冷奴にどんな醤油が合うか?ということになると、今まで私は当たり前のように濃口醤油だろうと思っていたが、これが案外、薄口醤油が合う。冷奴は、兵庫の「末廣醤油の本造りうすくち」に止めを刺すようだ。

 

ただこの醤油が合うのは、薄口醤油だから、ということよりも、塩分の引きがいい、ということなのかもしれない。「末廣醤油の本造りうすくち」は、香りがどこか洋酒を思わせるように妖艶で、口に入れてやわらかい旨みが広がった後、すっとその塩分が消える。これが豆腐のような淡白な食べ物に合うのだろう。

 

同じく塩分の引きがいい醤油に、長野の「大久保醸造の本造り甘露醤油」がある。これは再仕込み醤油と言って濃口醤油を再度仕込んだ醤油で、本当に2倍旨いかも、と思わせるような濃厚さがある。それでいて、塩分の引きもいい。旨みの強い豆腐には、この醤油が合うと思う。

 

この引きのよさは醤油をダイレクトに飲んでみればわかるが、元来しょっぱいのが持ち味の醤油のくせに、気づいたら塩気がいなくなっているから、それはもう、ニクイ。盛り上げるだけ盛り上げといて、宴もたけなわになって気づいてみたらもういなかった、みたいな、こんなやつはもうほんとに、ニクイ。

 

いい醤油というのをあえて決めるんだとしたら、この塩分の引きのよさは大事かと思う。

 

今度は、焼いた餅には何か?となると、まったりと旨みの効いた醤油よりも、やや塩気が鋭角で香りの広がる濃口醤油のほうがマッチする。岩手の「佐々長醸造の生醤油蔵造り」などは好相性。

 

これは結局、でんぷんの旨みに合うのはどんな醤油か?ということであるように思う。味噌で考えてみると、同じなんだなって思う。

 

まず、ごはんと、味噌を2種類用意する。一方は甘みのあるまろやかな味噌、もう一方は塩気の効いた味噌。この2種類の味噌を使っておにぎりを握ると、まろやかな方より塩気の効いたほうの味噌が合うことに気づく。

 

でんぷん質には、ちょっと自己主張の強くて、華やかさも取り入れてるやつが合いそうである。

 

そうそう、このなめ比べをしていて、醤油には上がる醤油と下がる醤油があることに気がついた。日本酒にも上がる日本酒と下がる日本酒があるのだけれど、一緒である。上がったり下がったりするのは何かというと、簡単に言えば香り、で、あながち間違いではない。間違いではないが、どこか違う。意識、と言っていいと思うが、あるいは中心線、と言うか。それを口に入れる前と後とでは、その口に入れた人間の意識の中心線が上がるか、上がらないか。

 

説明能力の限界だな。

 

ともあれ、これは、あくまで口に入れる瞬間の最初のインパクトの話。口に入るか入らないかで、ふわっと気持ちを持っていこうとするやつと、すっと着地して居座っちゃうやつと、大雑把に分けて二通りある。

 

主に香りの個性や強弱でもその区別ができるかもしれないが、塩分もそれに大きくかかわる。塩分というのは基本的に引き締めるものだから、上がらない。だから塩分が効いていると下がると感じることが多くなるはず。いやいやそれはきっと逆で、口に入れて意識の中心線が上がらないと感じた醤油には塩分を強く感じる、と言ったほうが正しいかもしれない。

 

これ以上は無理。つまり百聞は一なめに如かず。実際になめてみてくだされ。

 

違いがよくわかるのは、群馬の「有田屋の丸大豆仕込み天然醸造しょうゆ」と、群馬の「岡直三郎商店の日本一しょうゆ一番しぼり」の、群馬なめ比べ。有田屋は上がる。直三郎は下がる。ちなみに今日ここで出てくる醤油は群馬県前橋市の職人醤油ですべてそろう。詳しくはコチラ→http://www.s-shoyu.com/

 

その上でまだまだ続く、上げ下げの話。

 

上がる、下がる、があれば、上がりもせず下がりもせず、という醤油だってある。つまりバランスがとれている、と言っていい。岩手の「八木澤商店の生揚げ醤油」、同じく「丸むらさき丸大豆しょうゆ」しかり、長野の「大久保醸造の本仕込み紫大尽」しかり。

 

これらは口に入るところから胃袋に収まるまでをそつなくこなす。つまり食品として、食べた者から違和感や不快感を引き出さないバランス、を持っている。おそらく醤油をなめてみてうまいと感じるのは、こういう醤油だろうと思う。

 

それで結局、醤油をなめまわして私は何がわかったのかと言うと、醤油をなめて私が感じてるのは、これを作っている人はどういう人か、ということなんだな、ということなんだな。この醤油は大人だねぇ、とか、こいつは繊細だな、とか、ちょっと垢抜けない、とか。案外醤油の味はどうでもいいんだな、うん。なんと言うかいつもどおり、不謹慎な結果である。

 

20本の中に、奈良の「片上醤油の青大豆醤油」というのがある。これは上がる醤油で、ちょっと普通じゃない。何が普通じゃないかと言うと、上がりっぱなしなのである。戻ってこない。ずっと上がっている。たとえてみれば、自分をもてあまして飲み屋に行ってみたはいいが、一向に満足できずに飲みすぎてしまって直地点を見失っている青年、みたいな醤油。

 

この醤油、なんとかしてやらなくちゃいけない。料理人として。

QLOOKアクセス解析

2012年1月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

このブログ記事について

このページは、堀澤宏之が2011年4月 1日 22:59に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「白菜漬け」です。

次のブログ記事は「えごま(じゅうねん)」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。