v

リアルカンパーニュ

あいかわらずよく酒を飲む。酒を飲むために生きてるのかと言えばそんなことはわからないが、なんてことはない「おいしく酒を飲みたい」というところで普段の生活の逆算が始まるんだから、これは酒を飲むために生きているということなんでしょう。

 

酒を飲めば喰い意地が張る。ひとしきり酒が終わるまで、一体次は何が飲みたいか、と、だったらそれに合わせて何を食べたいか、を、交互に、かつ、まじめに考えている。まちなかで酔っ払って、体の中からあぶり出される食欲と向き合いながらウロウロすることしばしば。側から見れば、きっとアブナイやつだろう。

 

そんなことより、食事のときに、これは酒を飲まない食事のときに、なにが主食かという話です。私の場合はほとんどが米。それでその米は白米ではなく玄米のことが多い。つまりは玄米党、である。

 

昔からそうだったわけでなく、子供時分の食卓にはパンはあったし、ご飯といえば白い飯だった。7,8年前に、ご飯を玄米にしてみたら体調がよかった。ならばおいしく食べたい、というので炊き方や米の種類を工夫してみると、これが実においしいことがわかって、結果、玄米が白米を押しのけてしまった。

 

とうわけで何が言いたいのかというと、今日もおいしく酒が飲めるのはこの玄米のおかげ、という、あらためて玄米のすごさと酒のありがたさを噛み締めつつ日々を送っている私の、今日は、パンの話です。

 

ややこしいな。

 

要するに、私はパンにはうとい、ということが言いたかったわけです。

 

ベーグル、というパンをはじめて食べたのは最近。半年ほど前、高崎の地産地消の八百屋兼飲食店(「すもの食堂」と言う)で、「これ食べてみて」と出されて食べたのが初め。知ったところのパンに比べればそれはもう歴然とした違いの歯応えの塊で、一番驚いたのは噛むほどに小麦粉の味がじんわり沁み出してくること。そうやってあらためて、パンは小麦なんだってことに気づいたはいいが、それ以来、小麦の味がしないパンがいかに多いかがわかってしまって、これはうどんもしかり、なんだが、そうして小麦の味のしないパンがパンだと思えなくなってしまった。

 

パンがパンでなくなってパンになる、という、要するにパンとの親身な関係が始まるというのは、こういうことなのでしょう。

 

関係が始まる。小麦粉の味がしないのは嫌、となる。だったらパンなど喰うな、とでも言われているような、趨勢。肩を落としかける我食いしん坊ナリ。時に出会ったイカしたパン。その名はカンパーニュ。

 

カンパーニュ。よくわからないがそういうパンがある。

 

フランスパンの一種で、田舎のパン、という意味だとのこと。お惣菜、が、家庭料理のおかず、というのと一緒である。カンパーニュは、やはり硬い。小麦の味のするパンは押しなべて硬いのだろうか。

 

このパンの持ち味は、その力強い酸味。そんなことを知り、こうしてまた、パンとは発酵食品であった、という当たり前のことに気づかされる。パンがパンでなくなってパンとなる。これもちょっとした、ルネサンスかもしれない。

 

カンパーニュの酸味は言うなれば、小麦の味の向こう側。それを知って嬉しいのかもしれないが、これはパンにおける前提条件とはならない。たとえば米の味がするのが日本酒の前提条件だとしても、熟成老ね香の山廃仕込みでなくとも日本酒は日本酒だ。

 

そう考えると、カンパーニュは、パンという食べ物を分け入った先にある、なんだか奥深いもの、のような気もしてくる。

 

カンパーニュというパンは、田舎のパン、でしかないのだが、その中には、地元で取れた粉でこねたパン、という意味も含まれているらしい。ところがこの田舎パンが流行りだすと、地粉でないのにカンパーニュとして売る輩も出てきているとか。それを憂えたフランスの田舎のお母さんたちが、かどうかは知らないが、リアルカンパーニュ、という言葉を作り出した。

 

こっちが本物のカンパーニュだよ、という意味である。

 

これは、カンパーニュをファッションではなく生活の一部として、「カンパーニュという切実」を生きている人間の、抗議である。あるいは、「そんな風にカンパーニュを扱わないでおくれ」という願いかもしれない。

 

パンがパンでなくなってパンになる。

 

このごろ、ナンデモアリは飽きてきた。そろそろ、リアル党でいきたい。

QLOOKアクセス解析

2012年2月

      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29      

このブログ記事について

このページは、堀澤宏之が2011年9月13日 19:58に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「焼きおにぎり」です。

次のブログ記事は「ぬか漬け(2回目)」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。